南留別志263
荻生徂徠著『南留別志』263
一 物部系図の内に、他天動の大楯といふ物あり。盾人の作れる大楯という事を、あらぬ文字をつけたるなるべし。
[解説]「盾人の大楯」とすべきところを、物部氏の系図に「他天動の大楯」とおかしな文字を当てている、ということ。現物を見ていないのではっきりしたことはわからないが、ちなみに古代の人物に盾人宿禰(たたひとのすくね)という人がいる。的戸田宿禰(いくは の とだ の すくね、生没年不詳。砥田宿禰とも)のことで、『日本書紀』巻第十に見えている。誰も貫通させることのできなかった鉄の的に盾人が見事貫通させた。その勝れた力を高麗の客人たちは、「共に起ちて拝朝(みかどおがみ)す」と称えた。翌日、盾人宿禰は功績により的戸田宿禰という名前を賜った、という。本居宣長は『古事記伝』で、「盾の的を射たのだから、戸田を「盾人」に改めたのではないか」とする。
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