南留別志261

荻生徂徠著『南留別志』261

一 かしこきよりかしこからんとならば、色にかへよといふは、皇侃が義疏の説より、昔の博士がつけたる点なり。


[解説]「かしこきよりかしこからんとならば、色にかへよ」は『論語』「学而第一」の第7節の「賢賢易色」の部分の古い訓読(上代の博士家の読み)の一つ。『論語義疏(ろんごぎそ)』という注釈書が日本で早くからよく読まれた。これは魏の何晏(かあん)の『論語集解(ろんごしっかい)』に梁の皇侃(おうがん)が再註したもの。中国では一度滅び、日本に伝承されていたものが江戸時代に逆輸出されたという来歴を持つ。画像は京大図書館蔵本。現在は「賢を賢として色に易え」という読みが一般的。「美人を好むように、賢人は賢人として敬う」という意。徂徠は論語の注釈に力を入れているだけに細部に至るまで山ほどの見解があるが、ここではそれを抑えている。

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