南留別志248

荻生徂徠著『南留別志』248

一 昔の博士どもが、大唐(だいとう)とかきたるは、年号をたてたるに応ぜぬ事なり。


[語釈]

●大唐 古くは「たいとう」と発音した。中国の唐王朝のこと。大をつけて中国(唐土)の美称。江戸時代まで中国は日本にとっての先進国であり手本とすべき国であったから、唐以降、大宋、大元、大明、大清と尊称した。やがて自国を尊んで大日本と称するようになったが(『大日本史』ほか)、元来は大は他者に対する尊称である。なお、中国自身でも『大唐西域記』その他「大」をつける例は数多ある。

下の画像は「大清乾隆年製款 緑地青花雲龍紋 抱月瓶 」。「大清」自称の例。


[解説]日本の年号は西暦645年の乙巳(いっし)の変に始まる「大化の改新」からであるが、「大化」はほとんど普及も使用もされなかった。もともと「大化」を立てたのは、日本も独立国としての存在感を示したいといったことだと考えられるが、律令制をはじめ文化的なことのほとんどを唐から移殖したり模倣したほど唐の存在は強大であり、特に中国の学問教養により博士となった学者・知識人たちにとっては、日本の年号など意味のないものであった――徂徠はこういったことを言いたいのであろう。

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