南留別志231

荻生徂徠著『南留別志』231

一 白氏文集(はくしもんじゅ)に、匹如身後といふは、匹如すと下よりかへる事なるを、古の点には、匹如身をつゞけて、「するすみ」とよめり。匹夫の意に見たるなるべし。


[語釈]

●匹如身後 『白氏文集』二七・「偶吟」二首の「匹如身後有何事」の「匹如身」を「するすみ」と訓読した。『白氏文集』は我が国で早くから愛読されたが、昔は訓読が博士家によって異なり、定まっていなかった(古訓)。「匹如身」も、訓読がほぼ定まった徂徠の頃からすれば「匹如す身」と読むが、古訓では匹如身を一つとみなし、「するすみ」という読みを当てた。「するすみ」は財産も係累もない無一物の身のこと。原文は「匹如身後有何事、応向人間無所求」(匹如す身後何事か有らんに、応(まさ)に人間(じんかん)に向いて求むる所無かるべし)だが、古訓では「するすみののちなにごとかある、あしふみたてぬよのなかにもとむるところなし」と読んだ。

[解説]『白氏文集』は明治書院の新釈漢文大系に所収、索引まで完備され充実した完訳本です。平安の王朝文学などに大きな影響をもたらしたもので、国文学においても必読、必備の書です。

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