南留別志227

荻生徂徠著『南留別志』227

一 古は、俗人の入道したるに、沙弥(しゃみ)といふあり。御成敗式目(ごせいばいしきもく)にあり、新発意(しんぼち)といふあり。多田新発意、和田新発意などなり。沙弥は、沙弥戒をうけたるべし。新発意は菩薩戒をうけたるべし。宗門によりて、名のかはれるなるべし。


[語釈]

●入道 仏門に入ること。 

●沙弥 七歳以上二十歳未満で、比丘(びく)の資格を得ていない男子の出家者。 

●御成敗式目 鎌倉時代に、源頼朝以来の先例や、道理と呼ばれた武家社会での慣習や道徳をもとに制定された、武士政権のための法令(式目)。貞永元年8月10日(1232年)制定。 貞永式目(じょうえいしきもく)ともいう。 

●新発意 「しんぼっち」「しぼち」とも。① 新たに悟りを求める心を起こすこと。初発心。② 僧になったばかりの者。仏道に志して日数の少ない者。③ 浄土真宗で、寺の住職の子で僧となった者。 

●沙弥戒 沙弥がたもつべき不殺生戒等の十戒。 

●菩薩戒 大乗の菩薩が受持する戒。悪をとどめ、善を修め、人々のために尽くすという三つの面をもつ。梵網(ぼんもう)経に説く十重禁戒・四十八軽戒(きょうかい)など。小乗の声聞戒(しょうもんかい)と異なり、僧俗七衆が共通した戒法を受けるが、日本では鑑真来朝以後、梵網経(ぼんもうきょう)による梵網戒が一般的。大乗戒、仏性戒などともいう。菩薩戒律。菩薩浄戒。

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