南留別志221
荻生徂徠著『南留別志』221
一 燧袋(ひうちぶくろ)といふ物は、燧(ひうち)を帯ぶといふより起れる名なるべし。其比(そのころ)までは、烟草(たばこ)も鳥銃もあるまじければ、燧を、身をはなたず持つべきやうなしと思はる。
[語釈]
●燧袋 元は火をつけるための火打ち道具を入れた丈夫な袋。平安時代から盛んに用いられ,江戸時代には番袋ととなえ,風呂敷とともに需要の高かった袋物。食料や衣類から武具まで、いろいろなものを入れ、大きさもさまざまだったが、元は腰に帯びる小さなものだった。徂徠は、煙草も鳥獣もなかった時代には身に着けて離さないといったことはなく、燧(ひうち)を常に携帯するようになってから燧袋という名がつけられたのだろうとする。下図は弘化3年「燧袋図考」映水軒輯より。茶人の腰にあるのが燧袋。
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