南留別志217

荻生徂徠著『南留別志』217

一 越人を「あだしびと」とよむ。心得がたし。あだし男は、あだなる男といふ事なり。越人をよめるは、敵人の義なるにや。


[解説]和語の「あだしびと」は他人のこと。「あだびと」とも。「徒人(あだびと)」は心変わりしやすい人。風流を解する粋な人。「越人」は古代中国大陸の南方、主に江南と呼ばれる長江以南から現在のベトナム北部にいたる広大な地域に住んでいた越諸族の総称。越、粤(えつ)とも呼ぶ。非漢民族および半漢民族化した人々を含む。「越人」を「あだしびと」と読む用例は未詳だが、徂徠は敵人(かたき)の意味だろうと言い、そのように使われている例があったようだ。

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