南留別志215
荻生徂徠著『南留別志』215
一 釈迦牟尼仏を、「にくるべ」とよむは、如来部なるべし。
[語釈]
●釈迦牟尼仏(しゃかむにぶつ) 仏教の開祖である釈迦(ゴータマ・シッダッタ、ガウタマ・シッダールタ、瞿曇悉達多)を仏(仏陀)として敬う尊称。一方、これが苗字や地名としての用例があり、これらは「にくるべ」あるいは「みくるべ」と読む。『大日本地名辞書』坂東の「三廻部」の項に、「新編風土記云、昔三廻部(みくるべ)に釈迦堂あり、釈迦牟尼仏と書してミクルベと訓ずる故、村名となれり。村名も古くは釈迦牟尼仏の文字を書せしならん」とある。室町時代、三久留部兵庫助(みくるべひょうごのすけ)という地頭がここに住み、彼の仏堂があったので、その仏名を仮りて村名に転じたのではないか、とも。
●如来部 大乗仏教では仏の種類として、如来部、菩薩部、観音部、明王部、天部がある。本来、仏とは、仏教における最高の存在であり、悟りを開いた者である仏陀(如来)のこと。後に、仏陀に準ずる存在で悟りを開こうと修行している菩薩、密教特有の尊である明王、天部の護法善神などを含めた、仏教の信仰、造像の対象となる尊格を、広義の解釈として「仏」と総称するようになった。徂徠は、「にくるべ」という読みは「如来部」(にょくるべ)が元であろうとする。
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