南留別志213

荻生徂徠著『南留別志』213

一 「あんべいやうもない」といふは、田舎詞(いなかことば)なりとて、今は人のわらふなれど、源氏物語にあるなり。


[解説]「~だべい」「~すべえ」といった「べい・べえ」言葉は中世以降、東国の方言として広く使われるようになった。徂徠の当時も「田舎詞」として笑われる対象となっていることがわかる。しかし、徂徠はこれに対して、源氏物語にも見えるもので、京都でも使われていた雅なものであると弁護している。「べい」は推量の助動詞「べし」の連体形「べき」の音変化したもので、「べし」に同じ。「べえ」はさらに訛ったもの。用例としては「命こそかなひがたかべいものなめれ」(源氏 澪標)、「今行く末はあべいやうもなし」(更級)などがある。

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