南留別志201

荻生徂徠著『南留別志』201

一 「いなおほせ鳥」といふは、農を課する鳥といふ事なり。負の字の義にあらず。布穀鳥(ふふどり)なるべし。


[語釈]

●いなおほせ鳥 稲負鳥。古歌に多く詠まれた鳥の名。秋の稲刈り時に飛来する渡り鳥で、セキレイともトキともいうが不明。古今伝授の三鳥の一。「わがかどに-のなくなべに/古今 秋上」古今伝授は、中世、古今集の難解な語句の解釈などを秘伝として師から弟子に伝授したこと。東常縁 (とうつねより) から宗祇 (そうぎ) に伝えられたのが始まりで、以後、堺・奈良・二条の各伝授に分かれた。三木・三鳥などの秘事が有名。三鳥(さんちょう)は呼子鳥 (よぶこどり) ・稲負鳥 (いなおおせどり) ・百千鳥 (ももちどり) または都鳥。稲負鳥という表記は稲を背に負う鳥という意味だが、徂徠はそれを否定し、人が農業に使う鳥だとする。具体的には布穀鳥のことであろうという。布穀鳥はカッコウの古称。

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