南留別志180

荻生徂徠著『南留別志』180

一 田舎の女は、木綿のひとへなる物を、帯したる上にきるを礼服とす。古の小うちぎなどののゝこれるなるべし。又はちまきをするを礼儀とす。職人歌合などの絵にも、能の狂言にも、かゝるすがたあり。いやしき女の装束なるべし。桂姫といふものも、かしらを布にて、幾重にもまくといふなり。


[語釈]

●小うちぎ 小袿。貴族女子のなかでも特に高位の女性が着る上着。準正装として重袿(かさねうちき)の上に着る。普通の袿よりも身丈が短い。

●職人歌合 しょくにんうたあわせ。歌合せの一種。鍛冶・番匠・檜物師(ひものし)・鏡みがき・針みがきなど種々の職人の立場でよんだ狂歌ふうの和歌を歌合せの形式にして、その優劣を論じたもの。職人の風俗、生活を描いた絵を伴う。「七十一番職人歌合」が有名。左の心太(ところてん)を作っている女性が頭に布を巻いている姿が「桂姫」。

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