南留別志170

荻生徂徠著『南留別志』170

一 兵馬といふは、古の官なり。令に見ゆ。東百官といへるは誤なり。


[語釈]

●兵馬 ひょうま、へいま。百官名の一つ。兵馬司の官職名に由来する。兵馬司(ひょうまし)は、日本の律令制において兵部省に属した機関。訓は「つわもののうまのつかさ」など。兵馬司は、全国の牧、軍馬、公私における牛・馬の管理(近い性格の機関である馬寮は、主に朝廷での飼養を職掌としていた)、駅伝制などをつかさどった。大同3年(808)に廃止され、その職務は左・右馬寮に組み込まれた。「へいば」と読めば兵士と軍馬、転じて軍隊や軍備、戦争を意味する。

●東百官 あずま ひゃっかん。関東地方において武士が称した官職風の人名。朝廷の官職を模倣してつくられたもので朝廷における官職には存在しない。百官名と同じように、名字の後、諱(いみな)の前に入れて名乗った。徂徠が指摘するように、兵馬は古代の正式な官名であり、俗な東百官名ではない。但し、平馬(へいま)は東百官である。

[主な東百官]

伊織(いおり) 一学(いちがく) 斎(いつき) 右膳(うぜん) 鵜殿(うどの)

右内(うない) 右平(うへい) 右門(うもん) 衛守(えもり) 左源太(さげんた)

左膳(さぜん) 左内(さない) 左平(さへい) 左門(さもん) 平馬(へいま)

[主な実例]

西郷頼母 渡辺数馬 結城数馬 平賀源内 橋本左内 織田左門 本多伊織 寺西要人 清水一学 小野寺十内 飯泉喜内 神谷転 宮本伊織 榊原伊織 平田靭負 

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