南留別志164
荻生徂徠著『南留別志』164
一 頼朝のふみ(文=手紙)は、多くはかなぶみなり。今の時のふみのやうなる事は、室町頃よりはじまる。其前は皆庭訓(ていきん)などのやうなる詞なるゆゑ、文盲なる人はえか(書)かで、かなぶみを用ひたるべし。
[語釈]
●庭訓 孔子が庭で、子の鯉(り)に対して、詩や礼を学ばなければならないことを教えたという「論語」季氏(きし)篇の故事から、家庭教育、。家庭での教訓。なお、江戸時代では庭訓といえば「庭訓往来」(ていきんおうらい)を指すことが多い。代表的な往来物(平安末期から明治初期まで使われた初等教科書。往来とはもともと往復1組の手紙集のことで,のち単語,文を集めたものも含めるようになり,内容も教訓ものから実学的なものにまで及ぶ)で,12ヵ月に配列した25通の手紙文例からなる。作者は不明,南北朝後期〜室町初期の作と推定されている。室町後期には注釈本がつくられ,江戸期には絵入り本も含めて各種刊行され,武士家庭や寺子屋の初等教科書として普及。武士や庶民の日常生活に必要な語彙に重点が置かれている。
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