南留別志155

荻生徂徠著『南留別志』155

一 姓ありて苗字なきは、京貫の人なり。


[語釈]

●姓 かばね。わが国の上代で、氏族の尊卑を表すための階級的称号。臣(おみ)・連(むらじ)・宿禰(すくね)など数十種がある。 

●苗字 名字とも。家の名。現在は法律上では氏(うじ)と呼ばれ、一般では姓(せい)とも呼ばれており、姓と苗字は同義となっている。 

●京貫 京都に本貫(ほんがん、ほんかん)を持つ人のこと。本貫とは律令制において戸籍の編製が行われた地のこと。本籍地。京都に本貫がある住民を京戸(きょうこ、けいこ)という。京戸の多くは貴族・官人層。但し、京都以外に本貫(氏)を持つ者もいて、在任中は京都に住み、致仕すると本貫に戻った。徂徠が言うのは、京都に本貫を持つ者で、また皇親のうち、皇子・皇女が臣籍降下して勅によって京(右京・左京)に貫附(本貫として戸籍に登録)された人などを指す。この人たちは姓(かばね)を与えられるので、苗字は持たない。

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