南留別志148

荻生徂徠著『南留別志』148

一 和を「かつ」とよむは、かつる意なるべし。


[解説]和の字の名乗は「かつ」をはじめ、あい・かず・かた・かのう・たか・ちか・とし・とも・のどか・ひとし・まさ・ます・みきた・やす・やすし・やわ・やわら・よし・より・やわら等たくさんある。和は口と禾の形声文字で、会(カイ)に通じて「あう」の意。口から発せられる人の声と声が調和する、なごむといった意味。漢字は元の意味のほか、時代や地域、使う人により派生した意味を持つようになり、原義が失われて後から付加された意味で通用する例も少なくない。名乗に至っては由来を確かめないことにはどうしてこう読むのかというものがあり、しかし確かめようにも最初の用例、発案者といったものが分からないことが大半だから、推測するしかない。

 徂徠の言う「かつ」「かつる」は、「かつ」だけなら自動詞の「勝つ」「克つ」で人名として好まれるものだが、「かつる」という活用は自動詞にはなく、動詞につく補助動詞の活用となる(て/て/つ/つる/つれ/てよ)。自動詞の「かつ」は、た/ち/つ/つ/て/て。徂徠の解釈がいまひとつ釈然としない。

過去の出来事

過去の本日の朝廷や江戸幕府の人事一覧、その他の出来事を紹介します。ほかに昔に関する雑記など。