南留別志147

荻生徂徠著『南留別志』147

一 成を「しげ」とよむ事は、山のかさなるを、一成二成といふより出でたるなるべし。俊を「とし」とよむは、俊逸の義なるべし。賢を「かた」といふは、質の字より誤れるにや。是等(これら)も、漢字を名につきて、後によみを付くるときにつけかねて、形の似たるにて、通(かよ)はしたる事も有べし。


[解説]再び名乗りにおける漢字の訓についての用例と由来の考察。成を「しげ」と読む例は楠木正成をまず想起するが、有名過ぎて気にも留めないほど。しかし、成は普通はそのまま「なり」と読んだもので、「しげ」といった読みは「山のかさなる」ようなさまをその人物の性格や人生に込めるといったことから派生したとみる。賢は質の字を誤ったものとし、「かた」は借金のかたに取る、質にとるという意味で、賢にはもともと「かた」という訓はなかったが、字の誤りより生じたものだろうとする。賢における「かた」は意志が固いといった意味の「かた」になる。

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