南留別志144

荻生徂徠著『南留別志』144

一 烽を「とぶひ」といふは、飛報の心なるべし。野守の鏡といふは、烽を水にうつして、遠近の里数をしる法あるべし。水にうつして、遠近をしる事、算家の術なり。


[語釈]

●烽 烽火。のろし。狼煙とも。合図や警報のために、薪(たきぎ)・火薬などを用いて高くあげる煙。とぶひ。ろうえん。 

●飛報 飛ばして知らせること。 

●野守の鏡 鷹狩りの途中で逃げた鷹を、野守がたまり水に映る影を見て発見したという故事から、野中の水を鏡にたとえていう語。「花のころを影にうつせば秋の夜の月も―なりけり」〈山家集・上〉 

●算家 和算家。日本古来の数学である和算の専門家。江戸時代から明治維新にかけて活躍した関孝和、建部賢弘、安島直円、会田安明らが知られる。

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