南留別志142

荻生徂徠著『南留別志』142

一 脾を「よこし」、腎を「むら」と、肺を「ふくふくし」といふは、何に本づけるにか。胆を「い」といふは、胃を誤れるなり。


[解説]体内の臓器の異名(方言もあるか)について、由来の不明なものを列記する。胆のうの胆は熊胆(くまのい)という用例があるように「い」とも読むが、これは胃(い)と間違えたものという。杉田玄白らによる人体解剖(腑分け)は徂徠よりもっとあとのことで、この当時は漢方の書物に頼っていた。正確でないのは無理もない。

寺田良安『和漢三才図会』正徳2年(1712)より


同書の「膽」(胆=タン)。形が胃のように見えるので、「い」(胃)と見誤り、決めてかかってしまった人もいたことだろう。

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