南留別志142
荻生徂徠著『南留別志』142
一 古(いにしえ)は、天子を皇といひて、宮を王といふに、今は王といへば、天子の事なりと思ふは、天然のことわりなるにや。
[解説]徂徠は日本での用例を述べていると思われるので、この「天子」は天皇のこと。同様に宮は皇族。日本では古くは「すめらぎ」(皇)と言ったが、漢語の「天子」「天皇」を使うようになり、「すめらぎ」は古語化して使わなくなった。一方、江戸時代になると「王」は国王という意味で使うことが多くなり、このために「王」を「天子」(天皇)と同義もしくは同一視する向きも増えた。これに対して徂徠は自然の成り行きなのだろうと批判は控えている。
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