南留別志138

荻生徂徠著『南留別志』138

一 「あし」(葦)を「よし」といひ、「なし」(梨)を「ありのみ」といふは、物いまふ(物忌まう)人のいひかへ(言い換え)たるなるべし。


[解説]幕府公許の遊郭、吉原は最初に立地した場所は一面に葦が茂る淋しい所だった。「あし」は「悪(あ)し」に通じ、縁起が悪いというので、「よし」に言い換え、更に表記もめでたく「吉」の字にして「吉原」にした。のちに移転させられ、新吉原となってからもこのめでたい表記が使われ、現在に至っている。また、梨は「無(な)し」でこれも嫌な意味だからと、誰言うとなく「有りの実」と俗称されるようになった。結婚式などめでたい場では忌み言葉というのがあるが、日常でも、特に商売に関係するものなどはこの種の言い換えがなされている。なお、大阪や豊橋市などにも「芦原」という地名があり、駅名にもなっているが、これらは「吉原」といった言い換えはされていない。なお、葦簀を「よしず」と読むのも「あし」を「よし」と言い換えたもの。

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