南留別志129

荻生徂徠著『南留別志』129

一 甲斐(かい)の国といふは、峡の字なるべし。兜岩(かぶといわ)とか(書)けるは、鑿(さく)せるなるべし。


[解説]旧国名の「甲斐」という字は当て字で、「かい」とは「峡」、つまり谷間の意味として起こったものであろうとする。「兜岩」は石材を掘削して採取した跡が段々になっており、それが兜のような形であることからいう。「鑿」はうがつ、掘ること。掘削、削岩。前回の「和田」も当て字で、元の意味は曲った所を意味する言葉。徂徠は、現在使われている言葉について、その漢字は必ずしも元から使われていたわけではなく、後からつけられたものであるから、表記にとらわれてはいけないということが言いたいのだろう。

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