南留別志118
荻生徂徠著『南留別志』118
一 近家(きんか)が見せたる琴手法のうちに、文字のやうなる物の、すきて見ゆるをよみて見るに、催馬楽(さいばら)のやうなる物なり。催馬楽にてもなし。笛の手のつけたるを考ふれば、秋風楽なり。古はいづれの楽にも、かくあたらしく詞をつけたりと見ゆ。茂卿(もけい)がぬすみうかゞへるにあらさらましかば、其家の人もえしるまじ。
[語釈]
●近家 近所の家。
●催馬楽 平安時代に隆盛した古代歌謡。元来存在した各地の民謡・風俗歌に外来楽器の伴奏を加えた形式の歌謡である。 管絃の楽器と笏拍子で伴奏しながら歌われた「歌いもの」の一つであり、多くの場合遊宴や祝宴、娯楽の際に歌われた。語源については馬子唄(まごうた)や唐楽からきたとする説などもあるが定かではない。
●秋風楽 雅楽の一。左方の新楽。盤渉(ばんしき)調の中曲。常装束で舞う平舞の四人舞。嵯峨天皇の南池院行幸の際、常世乙魚が作舞し、大戸清上が作曲したという。現在廃曲。長殿楽。寿春楽。。明治以後の楽譜には収録されていない。
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