南留別志115
荻生徂徠著『南留別志』115
一 嬰羽嬰商(えいう・えいしょう)といふ事は、郢羽(えいう)、郢商(えいしょう)とかきたるまされり。体源鈔にかくかきてあれば、古は是(これ)を用ひたるならん。郢人(えいひと)の引商(いんしょう)刻羽(こくう)より名づけたるなるべし。
[語釈]
●嬰羽嬰商 日本の雅楽には律旋の七声というものがあり、宮(きゅう)、商(しょう)、嬰商(えいしょう)、角(かく)、徴(ち)、羽(う)、嬰羽(えいう)の7音。嬰は宮,商,角,徴,羽の五音に付して,そのもとの音よりわずかに高い (多くは一律上) ことを示す。嬰商,嬰羽がよく用いられる。
●体源鈔 「音律事在々所々に之を載すといへども更に口伝を以て、〈略〉反徴反宮郢羽郢商と云ふこと当座に勘(かんが)へしらんこと難(かた)し」とある。
●引商刻羽 引はトーンを長く緩やかに延ばすこと、刻は短く切ること。古代中国の音楽の二つの名。
[解説]雅楽で使われている嬰羽嬰商という用語の「嬰」は中国で古くから使われてきた「郢」がよい、それは郢の人たちが使っていたのが由来だからであるとする。
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