南留別志114
荻生徂徠著『南留別志』114
一 「わ」字を「可」字なりといふは、心得がたし。「香」字の半体なるべし。世の人、片仮名のみを半体と思へり。ひらがなにもあるべきなり。かなといふ物をつくりはじめを尋ぬるに、真字を略してかきたるより、おのづからに出来れるなり。たゞ今世の抄物かきとて、かける心なるべきを、昔の人のかなといふ物をつくらんとて、たくみてつくれるやうに思ふは、事の心にいたらぬなるべし。
[解説]引き続き崩し字(かな)について。「わ」は「和」の草書に由来する。ひらがなは草書体でも究極の形が多く、下図は「和」の草書だが、これを単純化させたのが「わ」。
ところが、徂徠によると、「わ」は「可」を崩したものと言う人がいたようだ。「可」の草書の例。
これに対し、徂徠は「香」の半体であろうという。下図の右が草書による崩しで、下半分が「わ」に近い。しかし、「わ」はこの字から採ったというのは、かなり無理があるのではないか。
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