南留別志112

荻生徂徠著『南留別志』112

一 なら(奈良)に「平城」とかけるは、平をならす心にて、よめるなるべし。


[解説]地元の人はよく知っているが、難読駅名の一つに「平城山」(関西本線)がある。「ならやま」と読む。古くは那羅山、平山、奈良山、乃楽山といった表記もあった。他に「なら」としては寧楽、名良、寧、那良など。「なら」という和語が先にあり、漢字表記があとからなされた結果、いろいろな表記があるという例。『日本書紀』崇神天皇10年9月条に「則ち精兵を率て、進みて那羅山に登りて軍す。時に官軍屯聚みて、草木をふみならす。因りてその山を号けて、那羅山と曰う」とあり、兵士たちにより平らに踏みならした地であることから「ならす」→「なら」となり、同じ意味の「平」という漢字が当てられて「平城」という表記が出来たのだろうとする。今の奈良県は山に囲まれ、吉野のある南部は険しい山地だが、平城京が置かれた所は平地(盆地)であり、「平」(なら)と呼ぶにふさわしい所ではある。

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