南留別志106

荻生徂徠著『南留別志』106

一  すめらぎ」も、「みかど」も同じことなり。皇帝の字にわけたるは、和語に文字つけんには、さもあるべし。漢語にかな(仮名)つけんには、なづめるなるべし。


[解説]和語の「すめらぎ」「みかど」、ともに同義だが、「皇帝」という漢語が伝わり、「皇」を「すめらぎ」、「帝」を「みかど」と訓じるようになった、ということ。「皇帝」という漢語は、秦の始皇帝が初めて使用した。それまでの統治者(天子)は「王」と称していたが、戦国の世の国々を滅ぼして天下に冠たる存在となったことから「皇帝」を称した。ちなみに、「皇帝」は「皇」と「帝」を合わせたもので、「皇」は人類最初の王という意味(王と自(はじめ)を合わせた字)、「帝」は「締」と同じで、宇宙の全てを束ねる至上神という意味で殷代に用いられるようになったもの。伝説上のものであるが、優れた三人の皇である「三皇」と、五人の帝の「五帝」を合わせて「皇帝」と称するようになったとも言われている。「三皇」は天皇・地皇・泰皇(人皇ともいう)、伏羲(ふっき・ふくぎ)・神農(しんのう)・女媧(じょか)その他の説がある。「五帝」も諸説あるが、司馬遷の『史記』の黄帝(こうてい)・顓頊(せんぎょく)・嚳(こう)・堯(ぎょう)・舜(しゅん)が古来より最もよく採用されている。嚳・堯・舜らは帝嚳・帝堯・帝舜という呼び方がされる。堯帝・舜帝でもかまわないが。図は帝堯と帝舜。 

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