南留別志96

荻生徂徠著『南留別志』96

一 「うつくしやべにゝもにたり梅の花 あこがかほにもつけたくぞある」といふは、菅家のいときなき時、よみ給ひしといふ。職人歌合に、「あこようくたもてこよ」とかけり。「あこ」とは乳母の事なり。上総国一宮といふ所は、あこなし御曹司の城なりといふ。千葉介が、乳母にうませたる子なり。「なす」とは「うむ」と云(いう)事なり。


[解説]「うつくしや……」の歌は、菅原道真が5歳の時に庭前の梅花を見て初めて詠んだものとされている。「あこ」(阿呼)は道真の幼名で、ここでは一人称だが、徂徠は「「あこ」とは乳母の事なり」とし、上総一ノ宮での用例を引き合いに出している。これが正しいとすると、道真の歌の意味も全く違ったものになる。

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