南留別志92

荻生徂徠著『南留別志』92

一 押領使(おうりょうし)といふ事を、俗にいふ横領といふ詞になして、其地を勅賜なくて、おして領せる人なりと解するは誤なり。さらば、何とて使の字をつけたる。奥羽軍記の和文には、陣頭とあるを、漢文には押領使とあり。国々より、公役にて出づる軍兵をめしつれていづる頭の事なり。押の字の意は、かく見る事なり。


[語釈]

●押領使 令外官(りょうげのかん)で,平安時代,諸国の凶徒鎮圧のため設けられた。国司,郡司中から選任。初めは臨時職であったが,承平・天慶の乱の頃から常設となった。また荘園にも押領使が置かれ、荘園内部の検察などにあたっとされる。ちなみに、疱瘡(ほうそう)の腫物の異称でもある。『吾妻鏡』嘉禎二年(1236)正月一七日「将軍家依二御疱瘡余気一。御股御膝腫物 号二押領使一」 

●押領 引率すること。

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