南留別志82
荻生徂徠著『南留別志』82
一 なゝくさのかゆといふは、七種の穀を粥にするなり。七品の草といへるも、兼好と同じあやまちなり。
[解説]現在、正月七日に七種の菜を入れてたいた粥を七種の粥(ななくさのかゆ)と言い、「くさ」は「草」と解するのが普通になってしまっているが、元来は七種類の穀物(米・粟・稗(ひえ)・黍(きび)など)を入れてたいた粥のこと。多く正月十五日に行なわれ、後世はあずき粥となった。前条に続いてここでも兼好法師が批判されているが、すでに兼好の頃には「七草」の粥が食されるようになっていて、それがあたかも古来からの伝統と思っている人も多かったのだろう。現代では健康食として雑穀米が好まれている。米や麦は雑穀ではないが、正月の伝統食だった「七種の穀」に類するものを常食する世の中が後世訪れようとは、さすがに徂徠も思いもよらなかったことだろう。
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