南留別志80

荻生徂徠著『南留別志』80

一 くれはとり、あやはとりは、くれはた織、あやはたおりなり。くれは呉なり。あやは漢なり。東漢なども、あづまのあやとよむ。文物国の意よりいふなるべし。服部も、はたおりといふ意なり。


[語釈]

●くれはとり 呉織(呉服、くれはとり)は、古代日本の女性渡来人(帰化人)の職工(綾織技術者)、あるいはその織工の名。 また、彼女たちがもたらした技術で織られた綾模様のある絹織物を指す。「はとり」は「はたおり」の音の変化したもの。 

●あやはとり 「あやはたおり (漢機織) 」の略で,雄略朝の頃,中国の漢から渡来したという絹織工。『日本書紀』に「其ノ貢ズル所ノ漢織,呉織 (くれはとり) 及ビ衣縫 (きぬぬい) 兄媛等ヲ率ヰテ帰ル」とある。


[解説]徂徠の頃は現在のような精密な国語辞典、古語辞典はまだなかった。徂徠に限らず、個々の学者(とりわけ大儒といわれる碩学)の頭の中に辞書があった。それを頭に置いて読むと、こういう短文でも味わい深い。

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