南留別志75

荻生徂徠著『南留別志』75

一 蝦夷(えぞ)は、国の名にあらず、人の種類なり。国栖(くず)、土蜘蛛(つちくも)、皆しかり。隼人といふも種類なり。


[語釈]

●国栖 国樔,国巣とも書く。大和国吉野郡に居住したといわれる住民。人里離れた所から古い習俗を残したことから呼ばれて宮中の節会(せちえ)に参り、贄(にえ)を献じ、笛を吹き、口鼓(くちつづみ)を打って風俗歌を奏した。くずびと。 

●土蜘蛛 古代、常陸(ひたち)国茨城郡に住んでいたとされる先住民。やつかはぎ。 

●隼人 古代、阿多・大隅(現在の鹿児島県本土部分)に居住した人々。日本神話には海幸彦が隼人の阿多君の始祖であり、祖神火照命の末裔であるとされる。


[解説]北海道を蝦夷地と言ったが、この「蝦夷」は国名ではなく、そこに暮らす人々を指すと徂徠は「国栖」ほかの例を挙げて説明する。


[余談]「南留別志」(なるべし)は江戸時代の儒者・荻生徂徠(おぎゅうそらい)が著わしたものです。何を勘違いされたのか、不肖、この私の綴ったものと思い、本文内容について批判を複数された方がいますが、地下の徂徠先生に言ってほしいとは思うものの、届くわけもなし。毎回、「荻生徂徠著『南留別志』」という標題をつけているので、これを見落とさないよう願います。

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