南留別志66

荻生徂徠著『南留別志』66

一 曽我物語、義経記は、つたなき物なれども、時代をいへば、太平記などよりは、前の物なり。室町家の代になりて、和文の体も一変せり。


[解説]『曽我物語』は、鎌倉時代初期に起きた曾我兄弟の仇討ちを題材にした軍記物語。 作者不詳で多くの異本がある。物語の成立には一人の女性が深く関わったとされる。『義経記』(ぎけいき)は、源義経とその主従を中心に書いた作者不詳の軍記物語。 全8巻。 南北朝時代から室町時代初期に成立したと考えられている。『太平記』は南北朝時代の軍記物語。40巻。小島法師作と伝えられるが未詳。応安年間(1368~1375)の成立とされる。鎌倉末期から南北朝中期までの約50年間の争乱を、華麗な和漢混交文で描く。徂徠は曽我物語と義経記を拙いものとする。おそらくこれらと比較している太平記を踏まえ、和文については拙いが、それは太平記が作られた時代よりも古いためで、室町時代になると和文も洗練されてきたと言いたいのだろう。室町時代といえば「太平記読み」のもととされる物語僧による太平記や平家物語の読み解き、講釈が行われた。江戸時代初期に始まった講談の源流である。

過去の出来事

過去の本日の朝廷や江戸幕府の人事一覧、その他の出来事を紹介します。ほかに昔に関する雑記など。