南留別志59

荻生徂徠著『南留別志』59

一 過所(かしょ)とは、関の切手なり。関の切手持ちたる船を過所船といふより、今は其名ばかり残れり。


[語釈]

●過所 「かそ」とも。語源は中国古代の関所通行証のこと。陸上,水運の要衝に関・津を設置し,交通取締りと関税徴収を行なった。旅行者は官に申請して旅行証を下付され,関・津でそれを呈示する義務を負った。園城寺 (三井寺) に智証大師円珍が入唐中使用した大中9 (855) 年の過所 (国宝) がある。日本の令(りょう)でも唐制の過所の書式が規定された。のち過書とも書くようになった。関所通過のための身元証明,および関料免除のための証明書を兼ねた。鎌倉,室町時代には関料免除を目的としたものが多く,下知状の形式で幕府,大名,有力寺社が発給する場合が多かった。江戸時代には往来手形が利用された。徂徠の言う「関の切手」とはこれを指す。 

●過所船 過書船。江戸時代における淀川の定期船。過所船とも書く。普通20〜30石積みで,船腹に「過」の字の印を打ち,上り1日,下り半日で京・伏見〜大坂間を上下する重要な交通機関であった。

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