南留別志52

荻生徂徠著『南留別志』52

一 武内宿禰が三百歳は、数代同名なるべし。三韓を威服すべき為なり。


[語釈]●武内宿禰 たけのうちのすくね。「たけしうちのすくね」ともいう。古代,大和朝廷初期に活躍したといわれる伝承上の人物。「記紀」によれば,孝元天皇の子孫,日本最初の大臣,神功皇后の新羅征伐に従軍し,景行,成務,仲哀,応神,仁徳の天皇に仕え,二百数十年間,官にあったという。蘇我,葛城,平群,巨勢の4氏の祖ともいわれる。


[解説]武内宿禰は三百歳も生きたと言われているが、徂徠は「武内宿禰」という名は数代にわたって受け継がれたもので、三韓(1世紀から5世紀にかけての朝鮮半島南部に存在した集団とその地域)を威服させるためであるとする。つまり、特定の人物の名前というのではなく、三韓威服の任に当たる者の官名のようなもので、それが三百年間続いたのだということ。後世、大きな商家が代々父祖の名を継ぐということが行われたが、徂徠の頭の中には、こういう例も思い浮かんだかもしれない。

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