南留別志41
荻生徂徠著『南留別志』41
一 「つ」は月の形なり。「へ」は部の略字なり。ふるき抄物には、多く「阝」かくのごとくかけり。はねがなは、「に」の字なり。らに、ぜになどためし多し。※は者なり。総じて、仮名の文字は、日本紀、万葉集などに、古来用ひ来れるさだまりあり。
[注]※はこの字
「部」の字は下のような略字で書かれることもある
[解説]漢字の略字について述べたもの。毛筆という性格上、連続して書くには崩した方が書きやすく、各数の多い字やよく使う字もまた略すことが多い。江戸時代の書物も特に庶民用の草双紙(絵入り小説本の総称)などは崩し字、変体仮名が使われており、武家など知識人の読む漢籍などが楷書体で現代人にとっては判読しやすいが、却って庶民向けのもののほうが難しい。当時は身分によって文字もまた区別されていた。別にそういう規則はなかったが、漢文は訓点を施す必要上、連続した崩し字ではそれができないといったこともある。武家でも和文の作品は草書や行書体のものを読んだし、自身もその書体で書いた。
草双紙の例
0コメント