南留別志38

荻生徂徠著『南留別志』38

一 壬生忠岑の墓に、銅板ありて、其文字にて、忠岑が墓といふこと知られたりとなん。墓誌石を用ひんよりは、簡便にて、しかも久しきにたふべし。


[解説]平安時代前期の歌人で三十六歌仙の一人、さらに『古今和歌集』の撰者の一人でもある壬生忠岑(みぶのただみね)。その墓に銅板があり、それに刻まれた文字から忠岑の墓であることがわかったという。墓誌は石に刻むが、石は風雪や苔などによりに表面が剥落し、ひび割れすることもあって、何が刻まれているのかがわからなくなる。これに対して銅板は制作が容易で長持ちするとして、徂徠が感心している。件の銅板はいま存在するのか不詳だが、徂徠自身も現物は見ていないようである。

過去の出来事

過去の本日の朝廷や江戸幕府の人事一覧、その他の出来事を紹介します。ほかに昔に関する雑記など。