南留別志31
荻生徂徠著『南留別志』31
一 読師(どくし)のするは、今の世の講釈なり。講師(こうじ)のするは、今の世の論議なり。講釈の事を物よみといひ習はし、法華八講など、皆論議をするは、僧家に古礼のこれるなり。異国にても、宋朝より、講の字を誤れり。吾邦の故実は、唐朝より伝へたれば、異国に勝る事もあるなり。
[語釈]●読師 仏教儀式における僧の役名。とくじ,どくじ。講問論義法要では講師(こうじ)と一対になり,本尊の両脇に設けた講座に昇り,読師が論義の対象となる経典の名を読み上げ,講師がその解釈を披瀝していく。地味な役割であるが,大規模な法要では講師と同様に輿(こし)で入場するほど重視されている。 ●法華八講 『法華経』8巻を第1巻から1巻ずつ8回に分けて講義し賛嘆する法会。略して「八講」ともいう。起源は中国とされるが,日本では延暦 15 (796) 年に奈良の石淵寺の勤操が4日間『法華経』を講義したのを最初とする。その後宮中,幕府において死者の追善供養のために行われた。
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