南留別志26

荻生徂徠著『南留別志』26

一 社をこそとよむ事は、やしろをこそといひたるなるべし。姫古曾(ひめこそ)といふ神もあるべし。鳬(ふ)をけりとよむも、かもをけりといふゆゑなり。又、杜をもりとよむも、社の字を誤れるなるべし。森の歌には、多くしめなはを読めり。


[解説]社会、会社の「社」を我が国で「やしろ」という訓を当てているが、この他「こそ」という訓もある。多くの中から一つを挙げる助詞として使う。「これこそが一番だ」といったように。「やしろ」は神の住まわれる祠のことだが、「やしろ」のことを「こそ」と言い、姫古曾(ひめこそ)という神を例示して徂徠は「社」を「こそ」と読むようになったことを推測して説明している。似た字として「杜」(と。杜甫の杜)を「もり」と読むが、これも「社」(しゃ)の字を見誤ってそう読むようになったのであろうとする。自分用に書き付けたもののため、読む者にすれば逆に混乱する感じだが、要するに見誤りやすい字に、本来はないはずの読みや意味がある字については、必ずそれの元となった字があるはずだ、ということ。

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