南留別志19

荻生徂徠著『南留別志』19

一 曽我五郎が元服したる所に、髪とりあげ、烏帽子きせと有りて、月額の沙汰なし。されども、西行法師は、月代(さかやき)の痕といふ事をかきたり。中剃の事なるにや。


[解説]絵は「曽我物語図会」より。手前で平伏しているのが、兄によって元服を済ませた五郎。女性は母。

曾我十郎祐成は、親の敵を討つために箱根の寺の別当に預けてある弟箱王の五郎時致を連れ出して、曾我に帰る途中自分の手で弟を元服させた。江戸時代の武士の元服は前髪を切り落とし、前頭部から頭頂部にかけての頭髪を剃りあげ、この部分を月代(さかやき)と言った。しかし、それよりはるか昔の曽我兄弟(日本三大討ち入りの一つで有名)の時には、ただ烏帽子を頭に載せる様子だけが書かれており、月代を剃る記述がないが、西行法師が月代の痕ということを記していることから、昔は江戸時代のように完全に剃るのではなく、中剃りにとどめていたのであろうかとする。

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