南留別志17

荻生徂徠著『南留別志』17

一 律、令(りょう)、日本書紀に拠れば、三種の神器といふ事は、古にはなかりしなり。神璽(しんじ)は、剣鏡の総名なり。


[解説]八咫鏡(やたのかがみ),草薙剣(くさなぎのつるぎ),八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)を三種の神器として皇位の象徴とされてきた。しかし、平安初期までは鏡と剣を新天皇に捧げる儀式が行われ、三種の神器という言葉も概念も、承継される具体的な神器もなく、9世紀以降に言われ出したようである。さらに、明治以後の国定教科書で潤色されて,三種の神器の物語が実話らしく語られ普及した。江戸時代のほうが現代よりも神話に対して冷めた見方をする人が多かったが、徂徠もその一人。古代の律令や日本書紀を見ても三種の神器というものがなかったのは明らかであり、神璽(神のしるし)は剣と鏡を指したものであるとする。

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