南留別志9
荻生徂徠著『南留別志』9
一 謀判(ぼうはん)とて、偽印の罪を重罪にするは、律に、謀判、謀反、皆十悪の一つなり。謀反むほん、謀判をぼうはんと読みわけたるを、文字をかきちがひ、義をもかきちがひて、十悪のうちといふより、重罪とはしたるなり。下手人を取るといふ事は、律に闘殴罪をば、多くの相手の内にて、重手おはせたる人を、下手人と名付けて、疵(きず)つけるもの死すれば、其人を殺す事なるを、誤りて抵死する事にいへるなり。
[語釈]●謀判 官印や私印を偽造し、それを使用すること。公文書・私文書偽造の謀書とともに江戸時代では特に重罪とされ、極刑が多かった。 ●十悪 中国の隋・唐以後の律で,国家,社会の秩序を乱す罪としてとくに重く罰せられた謀反(天子や国家に危害を加える)・謀大逆・謀叛(他国に逃げたり別政権に参加する)・悪逆・不道・大不敬・不孝・不睦・不義・内乱(近親相姦)の総称。 ●下手人 庶人に科せられた刑。利欲にかからない殺人,乱心による殺人,殺人教唆などに対して科せられたが、市中引き回しや家財没収といった付加刑がなく、死罪より軽いものとされた。 ●闘殴罪 暴行傷害罪。
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