南留別志3

南留別志 3

一 義経記に、白拍子をかぞふるといふ事あり。総じて、白拍子の詞は、物をかぞへならべてうたふ。水拍子に、昆明池(こんめいち)、頴川(えいせん)、厳陵瀬(げんりょうらい)、筧(かけい)の水、若水、などつらねたるがごとし。


[語釈]●白拍子 しらびょうし。平安時代末期から鎌倉時代にかけて起こった歌舞の一種。及びそれを演ずる芸人。義経記の主人公、源義経の愛妾となった静御前ももとは白拍子。 ●水拍子 水の白拍子。水の宴曲。徂徠没後の天保六年(1835)に伴信戸が編纂した中世歌謡集の『中世雑唱集』に次の歌がある。

水猿曲 或は水白拍子と号す

水のすぐれて、覚ゆるは、西天竺の、白鷺池、しむしやう許曲に、すみ渡る、昆明池の、水の色、行末久しく、澄むとかや、賢人の釣を、垂しは、厳陵瀬の河の水、月影ながら漏るなるは、山田の筧の、水とかや、芦の下葉を、とづるは、みしま入江のこほりみづ、春立空の、若水は、くむともくむとも、つきもせじ、つきもせじ

  (淺野建二『日本古典全書 新訂中世歌謡集』より)

肉筆画で描写された白拍子姿の静御前(葛飾北斎筆、北斎館蔵、文政3年(1820年)頃)

過去の出来事

過去の出来事

過去の本日の朝廷や江戸幕府の人事一覧、その他の出来事を紹介します。ほかに昔に関する雑記など。