斉諧俗談208(大尾)
斉諧俗談 208
〇大蚯蚓[おおみみず]
和漢三才図会に言う、深山の中に長さが一丈余もある大きな蚯蚓がいる。近頃、丹波の国柏原[かしわばら]遠坂村[とおさかむら]で、ある日激しい風雨により山崩れが起きた。そこから大きな蚯蚓が二頭出た。一つは一丈五尺、もう一つは九尺五寸あったという。東国通鑑(とうごくつがん)に言う、高麗の太祖八年、宮城の東で蚯蚓が出た。長さは七十尺あった。これはこの年契丹(遼)により滅ぼされた渤海国[ぼっかいこく]の人たちの念に応じたものであるという。
跋
天地の造化は妙用にして、これを神(しん)という。神の致すところは理解し難く、怪異でないものはない。ゆえに史伝では怪異の話が少なくない。この斉諧俗談はそれをまとめた書物である。近頃、怪異を集めた書が多く出され、実に汗牛充棟のありさまである。しかし、みな言い伝えや虚妄であり、実際の話を望んでいたところ、史伝中の実録を摘録した本書が上梓されたが、願わくは図が欲しいとのこと。予はその熱意に感じ、うやうやしく求めに応じて図を描かせていただいた。ここにいささか微言を記して跋とするものである。
亀 山㊞
[奥 付]
後編斉諧俗談 五冊 嗣出
宝暦八戊寅年正月
彫工 町 田 平 七
麻布谷町
大坂屋伝兵衛
東都書林
本石町通十軒店
大田庄右衛門
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