斉諧俗談198

斉諧俗談 198

〇貝蛸[かいだこ]

貝蛸は、その形秋海棠(しゅうかいどう)の葉に似ており、模様がある。大きなものは七、八寸、小さいものは二、三寸あり、乙姫貝[おとひめがい]ともいう。黄色または純白で、中に小さい章魚(たこ)がいて、両の手を殻の肩へ出し、両の足を殻の後ろに出し、船の櫂竿[かいさお]のような動きをさせて游ぐ。このことから章魚船[たこぶね]と呼ぶ。ある年、津軽の海浜に数百もの貝蛸が群がって打ち上げられた。人々は拾い集めたものの、怪しんで食べようとはしなかった。ためしに煮て、それを犬に食わせたところ苦しみもがき、毒があることがわかったという。


[語釈]

貝蛸 タコの一種。雌は体長24センチメートルほどで、黒く縁どられた純白の美しい薄い貝殻(アオイガイ)をつくる。雄はきわめて小さく貝殻はなく、昔は雌についた寄生虫と思われた。温・熱帯の海に広く分布。

過去の出来事

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