斉諧俗談191
斉諧俗談 191
〇野槌蛇[のづちへび]
和漢三才図会に言う、深山の岩穴の中に野槌蛇が棲んでいた。大きなものは太さが五寸、長さは三尺もあり、頭と尾は同じ形で、尾は尖っていない。柄のない槌のような形であった。そのため、俗に野槌と呼んだ。大和の国吉野郡の山中、菜摘川[なつみかわ]の滝のあたりで、時としてこれを見かけることがある。口が大きく、人の脚を噛む。坂から走って下る時はとても早く、人を追いかけることができる。ところが、坂を上ることは苦手できわめて遅い。ゆえに、もしこの蛇に遭遇した場合は、そこからただちに高い所に向かって走るがよい。蛇は追って来ない、と。
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