斉諧俗談190
斉諧俗談 190
〇天蛇之毒[てんじゃのどく]
和漢三才図会に言う、銭塘[せんとう]に一人の農民がいた。ある日、にわかに癩病(らいびょう)を発し、体中がただれ、激痛に叫びのたうち回って、今にも死ぬという時に、西渓寺(さいけいじ)の僧がこれを見、「これは癩ではない。癩は急に発症してひどくなるものではない。天蛇の毒に当たったのじゃ」僧はそういうと、ただちに秦皮(しんぴ)の煮汁を一斗ほど作らせ、農民に少しずつ飲ませた。すると、その日のうちに容態がよくなり、三日もすると完全に治ったという。
[語釈]
秦皮 トリネコの漢名。山地に自生する、もくせい科の落葉高木。春、淡緑白色の小花が円錐形につく。雌雄異株。実には長いはねがある。並木・田のあぜなどに植える。木の皮は漢方薬用。材は器具用。また、樹皮にイボタカイガラムシが寄生するので、ろうがとれる。
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