斉諧俗談171
斉諧俗談 171
〇海中鼠[かいちゅうのねずみ]
著聞集に言う、安貞の頃、伊予の国矢野保[やのほ]の浦にある島があった。黒島と名付けられた。人家を離れることおよそ一里、猟師が住んでいた。名を桂硲[かつらたに]の大工といった。ある日、網に数百もの鼠がかかった。引き揚げたところ、鼠はみな逃げてしまった。その後、島に鼠が多く出没しては田畑を荒らし、菜瓜を食い散らした。このため、島では畑を作ることができなくなったという。
按ずるに、本草綱目(ほんぞうこうもく)に言う、水鼠は鼠に似て小さく、菱やはすのみを食い、または魚やエビを食う。一説に、小魚や小蟹が化けたものだという。
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