斉諧俗談163

斉諧俗談 163

〇犬尽忠[いぬちゅうをつくす]

伝承に言う、昔、河内の国餌香[えか]の河原において、数百人が斬られるということがあった。いずれの骸(むくろ)もひどくただれて、誰なのか姓名も判断できず、衣服によって分かるものを引取った。桜井の田部[たなべ]の連[むらじ]胆渟[いぬか]という人が飼っていた犬が、ある骸の横で伏し、固く守るような様子であった。そこで、その骸を家まで運ぶと、犬も立ち上がってついて行ったという。また日本書紀に言う、守屋の家臣捕鳥部[とっとりべ]の万[よろず]という人が飼っていた白い犬は主人の骸のそばで守り、そのまま餓死してしまったという。太平記に言う、畑六郎左衛門が飼っていた犬は獅子[しし]といった。闇夜に敵陣を侵略するに、獅子がまず陣中に入り、警衛の隙をうかがって様子を見、すぐに戻って様子を告げた。このために畑の軍勢が勝ったという。

過去の出来事

過去の本日の朝廷や江戸幕府の人事一覧、その他の出来事を紹介します。ほかに昔に関する雑記など。