斉諧俗談157

斉諧俗談 157

〇三度栗[さんどぐり]

越後の国蒲原郡上野が原に、長さ八町、横十五町の栗の林がある。この栗、一年に三度も実を結ぶ。伝承に言う、親鸞聖人が当国の分田村[わけたむら]を通りかかられた時、一人の女が焼き栗を道端から聖人に差し上げた。安田村にて聖人は六字の名号を書いて女に賜った。

 〔割注〕その名号は、今、安田川の孝順寺にあるという。

それから聖人は大室[おおむろ]の里に向かう途中、上野が原で休憩し、さきほどもらった焼き栗をいくつか食べ、残りを地面に埋めると、「我が法が後世盛んとなれば、この栗も再生することだろう」と言われた。それからほどなくして芽が出、今は栗林になったという。

 按ずるに、常陸の国西念寺の前にも、同様の成り立ちの栗林があるということだ。

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