斉諧俗談156

斉諧俗談 156

〇八房梅[やつふさのうめ]

越後の国蒲原郡白川庄小島村[こじまむら]に、小島佐五郎(すけごろう)という人がいた。佐五郎の家の庭に八房の梅があった。伝承に言う、親鸞聖人が鳥屋野[とやの]に住んでおられた時、とある民家に入られた。その家の亭主が饗応し、塩漬けの梅を差し上げた。聖人はそれを召しあがると、その核を庭園に投げ、「私が教える法(のり)が広まるのであれば、この核は芽が出て木となり、鼻が咲き、沢山の実がなることでしょう」と言われた。果たして、聖人の言われたように立派な梅の木となり、しかも千葉の紅花にして、一枝に八輪もある。味はとてもすっぱい。人々は珍しい梅だとして、これを八房(やつふさ)の梅と呼ぶようになった。今の佐五郎は子孫であるという。

過去の出来事

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